愛なんて知らない
形もない
影すらない
温度もなく
音もせず
気配もなく
ただ
愛という
名前が与えられているだけ
そんなものは知らない
見たことも
触れたこともないのに
どうして存在するとわかるんだ
知らないから欲しくもない
欲しいと思わなければ
手に入らないことを嘆かなくてすむんだ
だから知らないままでいい
恋人達が寄りそって歩いていく
小さな女の子が犬を抱いて笑っている
なにも知らないままでいい
形のないもの
音のしないもの
存在を確かめられないものを追うのは
とても苦しいことだから
僕は知らないままでいる
悲しくはないよ