回想

私は歳をとった・・歳をとった
全て一瞬に解ける淡雪
今までの道程は

あの夏も暑かった暑すぎたあの日も
貴方が逝ってしまったあの日が
いま手の中で解けて消えてゆく
風に舞う淡い雪が
確かにあった貴方のぬくもりを消してしまう
記憶は降り積もりそして融けてゆく

歳をとったのだ
貴方のことを夏に流した涙を
消せることなど決してできないと思っていた若い日
思い出は地表にしみこむ水になり
私自身さえ地の底に沈むのだと
知らなかったあの頃

貴方は夏に逝き
私は冬に眠る
眠る私の上にまた雪が降り木の芽が芽吹き
夏の日差しに揺れる白い花びらが降り落ちる

年老いた私の白く濁った眼から
流れる最期の涙が
貴方を想うものでありますように