陸の魚

息ができない

海の底に沈んだ鴎
陸に打ち上げられた魚

息苦しくて肺に空気が入らなくて
助けを求めてシーツを固く握る
彼は気付いていないのか?
肩甲骨の上を何度も舌で嬲っては
指先が裂け目の奥を探る

指で中が翻弄され
舌先から電流が走る
息が出来ず涙で視界が霞む
溺れる
壊れる
死んでしまうのかもこのまま

繋がって
挑んで
貪って
私がお前を
お前が私を
そうしてお互いの心臓が
皮膚を破って剥きだしになったとき
それを喰らおう

お前の心臓が私に
私の心臓がお前に
移し変えれば私たちは
ふたりでひとつだ

夜が来て朝が来てまた覚めない夜が来ても
私たちは多分一日と違えずに死ぬだろう
心臓を共有しているものが
生き続けられるはずもない

だからもっと深く入って
突き上げて身体を揺らして溺れさせて
息も出来ぬように
生も止まるほど
沈んでいきたい