惜別

私がいなければ彼は生きていけないのか、彼がいなければ私が生きられないのか。どちらでもあり、どちらでもない。

生きるということは、ただ心臓が動いているだけではない。呼吸をする食べる眠る愛する。失い得て手放し獲得しようともがく。

私と彼は離れる事が無かった故に離す事など思いもよらなかった。呼吸や水と同じように其処にあったのだから。

私が死を迎えたら彼はどうするのだろう。彼の目が永久に閉じられたら。私達はそれを恐れる。

私達は不可分に過ぎた。あまりに繋がりあい溶け合ってしまったので、切り離す事が出来ない。

落雷で真っ二つに割れた木がそのまま立ち枯れてしまうように、私達の上に神の裁可が降りた日は共に倒れることになるだろう。

木は枯れやがて地面に倒れ苗床になり芽吹き若木が成長し空に向かって葉を広げる時、

私達はようやく静かに眠る。満足し微笑みお互いの頬を撫で、愛を語りながら眠りにつく。私達の愛が終わる時、それは喜びの日。