歌え 葬られぬ者たちよ 歌え

彼らは葬られず路傍に捨て置かれる。力なく投げ出された手足、土くれに塗れ血の滲んだシャツ。俯いたその顔は見えず、誰の息子なのかあるいは娘なのか夫なのか妻なのか若かったのか希望はあったのか愛を知っていたのか。傍らを通り過ぎる人間は知らないのだ。

彼、あるいは彼女は死の直前歌ったのだろう。愛する者に向かって、己を見捨てた天に向かって。母の胎内から生まれいで、成長し、この路傍で死を迎える瞬間。

彼は歌う。己を撃った兵士の顔を忘れても、愛する者の微笑みを眼に映し。灼熱の太陽の下で、叩き付ける雨の中で、舞い上がる土埃、銃声、悲鳴、砲弾の落ちる音、全ての音の中で、歌はかき消されやがて消える。

夜の風に死者の髪がなびき、静寂だけが葬られぬ者達の墓となる。