お前は誰、何処から来たの?さっきまで庭に誰もいなかったのに、僕を知ってる。でも会ったことないよ。遠くから?ずっと・・・遠くから・
どうしてひとりで遊んでいるんですか。
「つまらないんだ。姉様たちは女の子だから、僕と同じ遊びをしてくれない」
そうなんですね。
「僕はもっと強くならなきゃならないのに」
同じ年頃の男の子の遊び相手がいたらよかった?
「そうだ、それだよ。僕は男の子の剣の相手が欲しい。毎日剣の練習ができる。そしたら僕の秘密の場所を教えてあげる」
それはどこです。
「お前には教えられない。僕とその子だけの秘密の場所なんだから」
当ててみましょうか。
「わかるはずない」
もし私が当てたら、ひとつだけ願いを聞いてください。
「何を?」
当てられたら言います。良いですか?
「わかった。でもぜったい当たらないよ」
それは、庭の隅の古い温室ですね。
「え?」
庭師も来ない温室で、あなたは小さな薔薇の鉢に水をあげている。
「どう・・して」
当たったでしょう。
「・・・うん。なんでわかったんだ?あそこは僕しか行かないのに」
じゃあ、お願いを聞いてもらえますか。
「・・いいよ」
男の子が来たら、その子が好きだと思ったら、その薔薇をあげてください。
「でもまだ咲いてない。まだ二月だもの」
良いんです。
「枯れちゃうかも・・」
大丈夫です、きっと綺麗な白い薔薇が咲きます。
「本当に?」
ええ、きっと。男の子もあなたが大好きになりますよ。
「そうだといい。大好きな友達ができたら沢山遊べる。毎日でも剣の練習を」
ふふ、ほどほどにしてやってください。
「来るといいな。いつか来るかな」
きっと来ます。その子も会いたいと思っているから。
「知らない子なのに?」
多分、ずっと前・・生まれる前から知っていたんです。だからいつか必ず来る。
「お前はどうして、そんなことを知っているの」
とても遠くから来たから。でもあなたの近くにいるんです。
「よく、わからない」
もっと沢山のことがわかるようになりますよ。さぁ薔薇を見に行く時間でしょう。
「そうだ、お前もおいでよ」
後で行きます、待っていてください。
「うん、先に行くね」
待っていてください、もうすぐ会えるから。黒い瞳の小さな男の子が来るから。
それまで・・・。