アニばら語り オスカルの誠実さ

 

軍人として揺らがない信義を持ち、また兵達の信頼を得るために誠実であること。オスカルはそういう教育を受け、公では感情をあらわにしませんし、生来の性格もありとても誠実でした。
激情を向けるのはアンドレだけです。アンドレの左目が失明した時、近衛を辞めることで争った時。アンドレに関してアンドレに対してだけ感情を露わにします。しかし愛されていることを知ってからは変わります。
アンドレを遠ざけたこと、アンドレを愛していると気づいても告げられなかったこと、これは全てオスカルの誠実さです。

愛を返せないから遠ざける、目を奪った私が愛を告げられない、戦うことを捨てられないのに彼を連れていけない。誰よりもアンドレが大切だったから、オスカルはこれ以上アンドレを傷つけたくなかったんです。目を奪い、苦しめた上、命まで危うくさせることは。
義を切り離せず戦いに臨む私はひとりで行く。アンドレは平穏に生きてほしい。しかしアンドレはこれまでもこれからも共に生きる、と言います。それでもオスカルはかつて他の男性を愛しアンドレを傷つけたことで怯む。傷つけ目を奪って命まで危うくする。彼の答えは

全て愛している。

 

オスカルはそこでようやく、公も義も私も抱えて生きることを、アンドレを愛して幸福になることを、自分に許せたんです。

 

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アニばら語り オスカルの公と私

 

忘れられがちですが、オスカルは軍人(公)です。軍という強力な暴力装置を律するため、国を守るという(義)があります。オスカルにとって、まずは公と義があり、次が私(わたくし)

義とは国=王家を守ること、オスカルはそう教わり信じてきました。しかしやがて国=王ではないと気づく。国とはそこに生き根ざし種蒔く人達であると。オスカルは目を開けて生まれた人ですから、視野は広く考えは深い。特権階級で生まれ育ちながらも、次第にどこかおかしいと気づき始めたでしょう。
大きな転機はアンドレの片目が失われた時。オスカルは責任を感じて、アンドレの眼を、半分失われたアンドレの視界を考えた。アンドレの眼で見た世界を。それは彼女自身が見ていたのとは違う世界。持てる者と持たざる者の視点の違いです。
そうやってアンドレの眼、アランや衛兵隊士の眼で世界を見る。王や貴族が全てではなく、国とはそこに生きるすべての命あるものだと気づいた。気づいてオスカルは公と義を捨てられなくなります。それに対して私(わたくし)が相反もします。

ある時期まで公・義と私は反しませんでしたが、フェルゼンを愛したことで揺らぎます。国を守る義に反する私。オスカルは苦しんだ末、私を捨てます。(アンドレは私を捨てて生きるのはオスカルではないと止めますが)そしてその後、もう一度相反することになります。アンドレです。

 

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