キス

瞼にキス 左手の中指 手首の細い骨 うなじから背中に
逃れて捩れる腰へ 足の甲 膝 舌のざらつきを感じて微かな声が漏れる

何も見えない 初夏の夜に外は星が煌いているはず
でも月はなく 閉ざされた部屋には灯りが無い

腿の内側 滑らかな腹部の線 鳩尾から白い乳房へ 唇より先に指先が辿る
切り揃えられた爪があたる 桜に色づく胸の先端 野苺のように口に含む
そして始まりの時と同じように 熱で湿った唇にキスを

始まりと終わりも 熱が高まるときもゆっくりと凪いでいくときも
ひとつとして同じキスは無い

掌 小指の関節 肘の裏 首筋 骨も 血管も 心臓も 魂も
全部キスで塗りつぶしてしまいたい

それが彼らの望み