夜の呟き 灰の眼

朝目覚めると、窓の下で私を愛している男が見上げている。愛する者を見つめる眼をもって。私は一瞬その瞳を見返した後、窓を閉める。外は光が眩しい。

私も愛しているよ、焦がれるほど、身を焼いて灰になるほど。でも告げられない、それが私の罪だ。彼を私の火で焼くことはできない。

私は光に背を向け、彼の瞳に背を向け、膝を崩し自身の肩を抱いて俯く。今振り返れば、立ち上がって彼を呼んで走ってその腕の中へ、頬を捕らえよう、口づけしよう、何度でも耳元で愛の言葉を伝えよう。

そうして二人して灰になるのか。彼の左眼から血を流させたあの時のように。彼の右眼から光を奪いつつある今この時のように。

自分で抱く肩は細く冷たい。それが私の罰。だからもう、窓の下には誰もいなければいい。私を愛している眼が其処に無ければ、私は生きたまま死んで骨になり灰になり墓になって、彼の足元で眠る。

それが私の救済。だからお前、私の愛しい貴方、ずっと見ていて私を、愛していない眼で。その冷たい眼に抱かれることだけが望みなのだから。