色のない庭

ふと振り返ると彼が私を見ている。眩しそうに目を細めて。いつもいつもいつも、私の傍にいて私を見ているのだろう、手は伸ばさないままで。でも違う、そうじゃない。

私がお前を見つめたい。花を愛で微笑んでいるお前を、遠くから。夕方に振る雨から、走って戻ってくるお前を。私が見つめていたいんだ。

何も言わず、手は伸ばさず、触れもせで。ただお前の背中を、その肩越しに冬の満月を、見ていたいんだ。お前が私に振り返るのが見たい。私を愛している眼で見つめているお前を見ていたい。

夜空に月、地上にはお前。音のない夜、色のない庭。私とお前の二人だけ。二人の明けない夜だけが、欲しい。