白い世界

子どもの頃、白い夜が好きだった。冬の早い日が落ちるころ、空から風に乗って白いものが落ちてくる。遠くから聞こえるふくろうの声も、森の向こうの獣の遠吠えも、白い夜には聞こえなかった。夜がすべての音を消していた。ベッドに入って横になり、天井を見つめる。その上に白く降り注いでいくのがわかる。

音もなく、ただ静かに、世界を変えていく白い夜。眼を閉じて心の中で祈りを唱えた。明日の朝には、聖なる子どももが生まれいでた日には、空は青く晴れわたり、屋根も木々も川も白く光り、清浄な世界ですべてが生まれ変わっていることを、祈って。

静けさの中で安らぎ、やがて眠りにつく。

あの夜のどこかにお前がいた。祝福された美しい子どもが。やがてふたりが出会うことも知らず眠りについた、あの夜を忘れない。そしてこの、今夜の――――白い雪も。