愛の夢

こどもは夢をみる

 

「今日の夢は?」
「それはもちろん、立派な軍人になっている夢だ。馬上で私は剣を掲げて、敵の城へ突入する」
「それから?」
「それから・・は」
「どうしたの」
「大砲が砦を崩して、岩が降ってきた。なぜだか私は兎になっていて・・岩から逃げた」
「あっはは」
「笑うな!」
「ごめん、でもオスカルの兎ならきっと白くて綺麗だよ」
「そういうお前は、どんな夢なんだ」

「えっと・・僕は」
「何?」
「笑わないって約束する?」
「聞いてみないとわからない」
「・・空を飛ぶ夢」
「また?」
「笑わないでって言ったのに」
「大丈夫、笑ってない。今度はどんなふうに飛んでたんだ」
「鳥じゃなくて、なにか・・雲みたいなのに乗ってる」
「雲、って空の雲?」
「雲に乗って、風に流されて。最初は楽しかったんだ。この館や、森もどんどん小さくなって。でも、風に乗るだけだから・・流れていって、全然知らない場所へ」
「ふう・・ん」
「雲がだんだん小さくなって、落っこちた。そこが見たこともない森だった。その先に金色の光がある」
「それから」
「そこで目が覚めたんだ」

「お前はしょっちゅう飛ぶ夢をみるんだな」
「オスカルは見ないの?」
「私は・・見たことないかもしれない。でも・・」
「なに」
「雲に乗る夢なら見てみたい。風が気持ちよくて、空が近くて、きっとどこまでも行けるんだろう」
「笑ったのに」
「だから、笑ってないって。素敵な夢だよ。私も、どこか知らない場所に行ってみたいな」
「大人になったら行けるんじゃない」
「そうだな」

 

そう話してただろう。覚えているか。私はお前の夢の話を聞くのが好きだったんだ。お互い、朝見た夢の話をして、笑ったり怒ったり。ああ、あの時は笑って悪かったよ。まさか本当に雲に乗れる・・気球に乗って空を飛べるようになるなんて、あの頃は思ってなかった。

誰かが、夢を見たんだろう。空を飛んで、何処までも行く夢。その夢を叶えるために努力した人がいて、私たちは空を飛べる。アンドレ、だからお前の夢もきっと、叶うよ。人が生まれも身分もなく、分けられることも阻まれることもない。知らない、見たこともない世界が来る。私たちが手をとって・・歩める日がきっと来るんだ。

 

だから 夢を見よう  空を飛ぶ夢

 

 

END