水の底には

恋は落ちた者から沈んでいく

湖に投げ入れられた小さな石
波紋を残して深く埋もれていく

あれが僕だ

夜の湖面に浮かぶ月が綺麗で
闇の底でどれほど白く光っていたか
伝えたくて駆け出してしまう

でも伝えられない

暗く音もなく寒い森の中で
見上げた月の明るかったこと
水面に映る残像の揺らめいていたこと

伝えたい

君に話したい

月の光で
世界は白と黒だけだった
獣の声も葉づれの音もしなかった
月が全て凍らせていたんだ

そう伝えたいのに

君はそばにいない
僕を見ていない
君の心が僕にないから
伝えられない

恋を知った者は湖の底へ沈む
月の光は遠ざかっていく

水底で君に呼びかけよう

愛してる