織姫-参

陽に背くことは可能だろうか
黎明をおしとどめ
世界を永久の闇に 夜のままに
そうすれば私たちは二人でいられる

私はたくさんの糸を紡いだ
もう一匹の蚕も残っていなかった
黒い布に血の痕が染みるほど急いで機を織った
広い床は黒い布で覆い尽くされた
それは真の闇
月は新月となり星の光すらない夜の色

この地上に永遠に続く夜を
魚は目を失い鳥は歌わず花は閉じてうな垂れたまま
それでも私はお前を人に留めておきたい

お前の唯一つの瞳は夜の闇でできている
だからお前は昼の世界で人でいられない
私たちは黎明とともに引き剥がされる
私が永遠の闇を願うことに何の不思議があろうか
これは私だけの企て 私だけのたくらみ
お前はいつもと違う私に眉をひそめる

やがて夜の底が白んできた
山の稜線の向こうに原初の光が
朝の曙光が差し込もうとしている

その瞬間

私は帳を下ろした
広く 広く 一面に
闇を広げた

魚は泳がず鳥は沈黙し花は目覚めなかった
私は神と黎明に背いたのだ
永遠の夜と永劫の闇がやってきた
お前は背後から優しく私を抱きしめる
私の罪深さと愚かしさに涙を流す

恋人よ 泣かないで
私たちは二人でいる
全てが滅び去った永久の闇の中で
ただふたり

お前の髪と瞳の色は夜と溶け合う
私たちも二人溶け合おう
やがて私たちも闇に飲み込まれ

あとにはただ黒い真空だけが広がっていくのだ

 

END

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”Lady hawke”より