織姫-弐

昼間 お前は地上にいない
鋭い嘴と爪を持ち
高い空で風に乗る一羽の鷹になっている
左目は傷跡で閉じられ
残った眼で地上を睥睨する

草原から何かが飛び出してきた
獲物だ
翼をすぼめ頭を低くして一気に地上まで舞い降りる
獲物の白い毛皮が赤く染まって
お前はまた空へと昇っていく

私が機を織る音がお前に聞こえているだろうか
塔から出て青い空を仰ぎ一羽の猛禽となったお前の姿を探すとき
地上の私に気づいているだろうか

私は機を織り続ける
夜の帳を下ろすために
お前を人へ戻すために
黒い帳が下りれば
お前の羽根は霧散して人の姿へ戻る
闇を宿す隻眼で私を見つめ腕に抱き取ってくれる

夜だけが二人の逢瀬
夜だけが二人の時間
それはあまりにも短い

窓から差し込む曙光が二人を引き裂き
また一日が始まっていく
そして糸を紡ぐ 機を織る

鳥になったお前の瞼の上に
夕べ落とした口づけの痕を想いながら

 

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