織姫-壱

こんな夢を見た

糸を紡いでいる
糸車のカラカラ回る音
それから機を織る
縦糸 横糸
急いで--急いで
広い部屋を埋め尽くすほどの
黒い布が織りあがる

早く--急いで--塔の階段を登って
布の重さに息を切らしながら
ようやく私は塔の一番上の窓まで上がってきた
急いで--もう陽が落ちる
空はオレンジに染まっている

私は布を持ち上げ
塔の窓からいちどきにふわりと投げ上げる
間に合った
真っ暗な闇が
夜の帳が下りた

私は胸躍らせ階段を駆け下りる
お前の元へ お前の胸へ
両手を広げて待っていたお前の腕の中へ飛び込み
抱きしめあい口づけをかわす

夜が来なければ私たちは抱きあえない
おたがいの髪に指を絡めることも
裸の胸に吐息の湿り気を感じることもない

だから私は毎日
糸を紡ぎ機を織る

今日も帳がおりるよう
お前に会えるように

 

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