空の片隅

・・眼を開けて。

アンドレ・・・?

そうだよ。

会えた、やっと・・ずっと会いたかった。お前のいない時は長すぎた。苦しかった・・。

ここにいるだろう。

もう・・私を離さないで。離れたくない。何処へも行かないで。

ここにいるよ。だからオスカル、眼を開けて・・よく見てごらん。

此処はどこ・・真っ白で、何も無い。

そうだ、此処にいるのは、俺たち二人だけだ。みな、行ってしまったから。

何処へ?

いくべき場所へ・・行かなければならない。此処には留まっていられないんだ。

嫌だ。

オスカル・・。

ようやく会えたのに、離れないと言ったのに。また、分かたれなければならないのか。

此処にいる限り、生も死もない。何処へも行けなくなってしまうよ。

それでもいい・・お前と二人でいられるなら。ずっと此処で。

神の御許へいけなくても・・?

・・・。

閉じた輪だ。時間も無い、空間も。死んで離れることも無い代わりに、生きることも無い。それはお前じゃない。オスカル、お前なら生きられるんだ、何度でも強く。

強くなどなかった。いつも、弱く、無力で・・お前がいなければ何もできなかった。

そうじゃない、違うよ。わかっているだろう、オスカル。お前は自分の力で生きた。
おまえ自身の力だ、オスカル。他の誰でもない、お前だから成し遂げられた。

ならばまた・・行ってしまうのだろう。私をおいて・・。

会えるよまた。何度でも。

何度でも?

そう、何度も何度も・・俺たちは出会い、離れ、また引き寄せあう。鳥が故郷に帰るように、その鳥の子どもがまた北を目指すように。何度でも。だから離れるんだ今だけ。

アンドレ・・眩しい。眼を開けていられない。

愛しい、愛しいオスカル。待っているよ、今度は別の場所、別の名前で。

眩しい・・溶けていく。アンドレ---アンドレ。

・・消える・・そ・・名前は---

ア・・

 

空の片隅に雲が浮かび、そして消えた。
後には・・ただ、白い鳥の声だけが残った。