言葉ではない真実

「でも好きなんだろ」
「・・どうかな」
「は?!お前ね。俺たちぶち殺す勢いで銃ぶっぱなしたのは何だったんだ」
「あれは頭に来てたからな」
「それも惚れてるからこそだろうが」
「当たり前だ」
「さっきと言ってることが逆だぞ」
「でもそんな言葉じゃない」
「何が」
「好きとか・・惚れてるとか。手に入れたいよ、抱きしめて、キスして身体の隅々まで触れたい」
「ストップ」
「髪を取って指を絡めて、それから」
「だから止めろ。それ以上聞きたくない」
「お前だって考えてるだろう」
「ていうか、お前ちょっとおかしいぞ。これくらいで酔わないはずなのに、なんでそうべらべらと」
「さっきの酒・・がおかしかったな・・いつものカルヴァドスじゃなかった」
「そういや見慣れない瓶だったが。いやお前、ここで潰れるな」
「好きとか・・愛してるじゃな・・い。そうじゃなくて俺が・・」

・・言葉じゃないんだ。手を伸ばして、抱きしめて折れるほど、髪に顔を埋めて・・お前の中に埋もれたい・・膚に唇の痕をつけて、滑らかな曲線を描く腰を抱き寄せる・・・溶け合いたい、血の一滴まで混じりあいたい・・何度も・・・何度でも考えている、言葉にしないけれど・・できなくても---

「ひとりで潰れやがって。まあ、吐き出したい時もあるか。俺もこの酒を飲んだら、口にすることが出来たら・・・いや、止めておこう。暫くは、寝かせといてやるさ」

 

*カルヴァドス;林檎の蒸留酒

 

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