夜の呟き 左眼の羽

肉の中に骨があり
その最奥に翼の根がある

彼女の翼は肩甲骨の内側で
小さく金色に瞬いていた

美しさは肉の表面ではなく骨格にあり
さらに中に流れる髄液の中で光る

眠っている時光は
背骨の両脇で結晶になり
翼の根を育て芽吹かせる

さわさわと葉ずれの音にも似て羽は成長し
大きく力強く羽ばたく

彼女は目覚めぬまま
月光の影の窓を開け飛び立つ
地上に残された彼が見送る

彼女が自在に飛ぶ夜は彼の左眼
彼の瞳孔に彼女が映る限り
彼らの夜は続く