あの日の少女

とてつもない無鉄砲。

天使のような輝く髪をして、雪に似た真っ白な肌。頬は薔薇色。そんな子どもが、丘の一番高い木のてっぺんまで登ろうとし、流れる小川の源流まで遡ろうとする。当然、木からは落ちた。小川を辿る途中で道に迷った。

木の上で太陽がどこまで近くなるか見たい、お前は見たくないのか?月に向かってどんどん走れば追いつけるのか、知りたくないか?
教師に聞いても誰に尋ねても答えてくれないなら、一緒に試すしかない。当然だろ?とばかりに。

巻き込まれたと思っていた。でも本当は見たいし知りたかった。村で過ごしていた頃よりずっと、たくさんの場所に行ってたくさんのことを知ることができた。生傷と説教は絶えなかったけどね。

長い年月が経ってからも、まだそんな無鉄砲な少女がいることを知っている。とても小さくなったけれど、心臓の近くに確かにいる。新しい時代だ、お前も見たいだろう?だから走ろう、一緒に行こう。

そう言って手を伸ばし、お前は先に走り出すんだ。待ってくれ、という言葉より先にもう外へ飛び出している。外は明るくて、目がくらむ。お前が振り返って待っている。

わかった、一緒に行くよ。何処までも一緒に---生きていく。

 

end