夜の呟き 砂時計

お前は俺を知らない。俺がどれだけの夜、お前の幻を追ったのか。残酷な朝の光に浮かび上がるお前を、骨が折れるほど抱き留めたいと、誰の眼にも触れさせたくないと、凶暴な想いを押し込めたのか。お前が知るはずも無いのだけれど.

お前は私をどれほど知っているというのか。背中を向け扉に向かうお前に駆け寄り、私から片時も離れるなと。朝が来てお前が遠ざかっていく足音が耐え難いと。そう叫びたい声を押し殺す。義務も責務も捨て去り、お前の腕の中だけにいたい。砂時計の砂はもう残り少ない。

お前は知らない、知るはずもない。柔らかい繭の中にいて、互いだけを見つめていられたら。そう望む心を。時計の針は回る、砂は落ちる。我らに残された時は少ない。だから気づいてくれ・・立ち止まって、振り返って。互いの眼の中に映るお互いを見つめ、最後のキスをするために。