滅んだ世界

雨だ、降り続いている。

始めは霧のように風にすら吹き飛ばされていた。青く透明だった空は、灰色に重くなる。やがて、石畳に黒い染みを残しはじめ、ぱたぱたと音がする。

雨は吹き荒ぶ風に舞いながら、大地を人々の頬を濡らす。染み込んだ血を洗い流す。

雨が、私の頬に胸に流れる。雷鳴が轟き、木々をなぎ倒し山を崩す。

惜別の悲しみが嵐となって世界を壊してしまう。お前のいない世界。

雨よ風と共に吹き荒れ、滅んだ世界を涙で流しておくれ。

お前がいない悲しみ。お前のいない、雨の世界。