空に溶ける

お前はどうして遠くを見ているんだろう
振り返った私を見つめるお前の眼

陽にかざす黒曜石の断面のように煌めき
光差さぬ海の底のように深い
その眼が

私をつつみさらにその向こうへ
空の高みまで見ている
私はお前の眼の中で溶けて
お前の瞳が映す世界全てに広がってしまう

私の不安な顔にお前はふっと微笑み
手をとってくれる
暖かい掌

私はこれを離すまい
お前の左眼が見ている世界の果てが
どれほど遠くても
このぬくもりだけは確かなのだ

だから

どうか

お前は私だけを見ていて
遠く空掠める鳥に心奪われたりしないで

私はお前だけ見つめるから