KING OF PAIN

望んだのはたった一つのこと
愛されたい 愛し返されたい 愛しているのと同じほど還してほしい

腕の中で微笑んで 柔らかい唇にキスを 触れるとひんやりとした髪 蝋細工じみた首筋と胸元

キスを耳に滑らせて 息を吹きかける 緊張が走る体を腕で抱きとめ 動脈をたどって胸へ なだらかな隆起を描いた線は闇に溶け込まない 薄い花の色をした先端を口に含む
吸い上げる 声があがる 身体がのけぞり離れようとする 濡れて開いた唇の中へ入り込み 舌の裏を絡ませる

全身の皮膚が剥がれる
神経が剥き出しになり 骨がきしむ 砕けそうだ

白い肌が心臓から広がるように紅く染まっていく 汗がにじんだ掌を握りあって 互いの瞳を覗き込む

夢だ 朝の光とともに消え去る夢 後には何も残らない
―――愛してる 愛してる
つぶやかれた言葉だけが耳の奥に木霊する けっして囁かれる事のない

背中を向け 身を捩じらせる彼女の表情が見たい 昇りつめたい衝動を押しとどめ 背骨に舌を這わせる 翼の名残の骨が雄弁に動く
此処から何処かへ 知らない場所へ 今生きて呼吸しているこの世界以外の場所へいきたい

膝の裏 足の付け根 襞のその奥 身体が熱い 彼女が振り向いて何か叫んでいる 喉が破れるほど俺の名前を呼んで―――

愛されたいと思う気持ちなど切り落とせばいい 斧を振りかざし 右腕を落とせば 夜毎訪れる苦しみの王に会わずにすむ

愛してる 愛されたい 抱きしめたい 触れたい くちづけたい

愛してる

愛してる