所有者

指を吸う

含んだ時歯に爪が当たる
躊躇いがちな彼の薬指
舌先を丸め誘い込む
するりと
口内に異物が入ってくる
爪下の関節を歯で捉え
切り揃えられた爪の先を舌でなぞる
甘く辛い
口を窄めてもっと奥へ
ざらついた皮膚の感触が心地よい

舌だけで何故
彼が眉を寄せ息を凝らしているのが判るのだろう
薬指の第二関節の
彼の骨と私の歯先がせめぎ合う
私はこの指を噛み切ることもできる
噛み砕いて血を味わい
飲みこみ私の中に取り込みたい
彼の破片を私の血に
私の心臓に

そうすればいつも共にいられる
決して離れない
ふたつにならない
もう離れるのは
阻まれるのは
秘め続け
沈黙し
ただ夜にだけ許される恋は
嫌だ

お前は私のもの
私はお前の所有
お前の背中の骨は私の踝
私の耳朶はお前の左眼
私たちはひとつになり溶けあい離れない

だからもっと
お前の指を私に浸して
お前の皮膚を吸いながら
左の薬指を味わう間
ひとつになる夢を見る

叶わぬ夢を