声の重さ

初めて聞く声だった。出会ってから何万回聞いただろうその声が。 声には重さがある。喉を震わせ、鼓膜に届くだけの音なのに。 重さ、熱、手触り、柔らかさ、耳元で響くその声に。息ができない。

己の心臓の音が耳の裏に響き、それに彼の声が重なる。 目を閉じると、音と肌の感覚だけになる。それは彼の見ている世界。 私もそれを感じたい、彼の声で身体を満たしたい。だからもっと私の名前を呼んで。

耳元で私の胸の上で、囁かれる言葉が、肌をとおして染み込んでいく。 暗く暖かな海に沈むよう。生まれる前のその海で、私たちは一緒にいる。 離れられない、離れるのは海が干上がり、身体中の血が流れだし、この海の外に投げ出される時だ。

その時まで、生の終わりまで、私の名前を呼んで。 あなたの声で、見えない世界になっても、呼ぶ声だけは届いているからを