夜の呟き 欠損

時々、お前に出会わない人生を考える。二人何処か遠い場所で育ち、幾千の森と河に隔てられる。何かが足りない、誰かが呼んでいる、折に触れ空を見上げ知らない何かを探す。お前の知らない相手と共に人生を歩みながら、身体の奥の埋まらない欠損を抱えて。

そして最期の朝に、窓から差す光りの中に、お前を見る。ずっと会いたかった、ずっと呼んでいた、どうして会うことが出来なかったんだろう、これほど繋がっていたのに。

今際の際に手を伸ばす。神のいる天上より、お前の手を取りたい、風よ吹いて、閉ざされた窓を開けて、そうすれば・・お前に会える。もう二度と、離れたりしない。